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2013年2月26日 (火)

『夢の一夜。』

ここは那須の山あいにある温泉地。
創業350年の、江戸時代から続く癒しの宿。
この宿に初めて訪れたのは、通芳がまだお腹の中にいる頃。
それ以来、年に一度はこの宿に来て癒された。


思い出深いこの宿で、三味線の演奏をすることになった。
私のお客さまもたくさん来て下さった。
宿の宿泊客とともに、演奏するロビーはたくさんのお客さま。
今までの、癒しや思い出をいただいた感謝の気持ちを込めて、一生懸命の演奏。
演奏後は、 わざわざ演奏を聞きに、那須の山あいの宿まで来て下さった私のお客さま方と共に、お食事。
なんか子供の頃に、親戚の人たちが訪ねて来てくれた時のような気持ち。
楽しくて、食べる暇がない。


今日のお客さまの中に、30年前から私の演奏を聞いていただいている方がいた。
もう全てから引退され、今は施設に住まわれている。
足を悪くされ、つらいリハビリを続けていらっしゃると聞いていたが、今日はお一人で杖をついて新幹線に乗って来られた。
昔はどんな遠い場所にでも、私の演奏を聞きに来て下さった方。

私は、隣の席に座らせていただく。
「今日は、死ぬ前にあともう一度だけ、佐藤さんの演奏が聞きたくてやって参りました。今日は、本当にいい日になりました。」

私の胸は切なく、ズキンと痛んだ。
この人たちに、私は支えられてきた。この人たちがいたからこそ、私は演奏が続けてこられた。
ただただ有り難く、頭を下げることしかできなかった。


夢の中のような一夜は、更けていった。

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2013年2月14日 (木)

『甲府 桜座。』

タブラ吉見征樹との西日本ツアー第一日は、甲府桜座。
私は桜座での演奏は二回め。
「今回の演奏は奥のホールではなく、カフェで生音でしましょう。」とのこと。
音響さんと一緒に、舞台に衝立を置いてみたり舞台の絨毯を剥がしてみたり、演奏位置を変えたり。
いろいろと工夫をしながら、ベストな音色の響きを探す。
「うん。こりゃいい。」
いい音だ。
三味線の一番あまい、いい音がそのまま返ってくる。
この日の演奏は、マニアックなものになった。
お客さまも緊張感と熱狂で応えてくださった。

演奏後、打ち上げ会をしていただく。
美味しい料理と、お酒。
かなり飲んでしまった。
桜座の瀧野さんとは新宿ピットインの頃から、三十年来のお付き合い。
音響さんも面白い。「生音に勝る音はない。」と言う音響さんに初めて会った。

私の相棒吉見征樹、インフルエンザで今日は休演。
昨夜の電話の声は、とても頼りなかった。
この場で電話して、瀧野さんママさん音響さん。みんなに電話をまわす。
心なしか声が元気になった。

ふらふらしながらホテルに帰る。
甲府の夜空を見上げると、凍った月が銀色に輝いていた。

明日は名古屋に向かう。
Rps20130216_011410


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