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2012年10月21日 (日)

『大船渡』

東北新幹線水沢江刺駅からお迎えのバスで、大船渡市リアスホールに向かう。
色づき始めた山々に、分け入るように右へ左へ山道を登る。
たくさんの復興工事のトラックと行き合う。
やがて峠をこえ、道を下りると大船渡の街並み。
一時間半でリアスホールに到着。楽屋入り。
大ホールのサウンドチェック。柔らかくてとてもいい音色だ。

よし!
明日は大船渡市の皆様の幸せを祈って、一生懸命の演奏をする。
ホテルへ、スタッフの方に車で送っていただく。
ホールから海沿いの街に入ると、景色が一変した。
見渡すかぎり何も無い。
所々ぽつんと鉄筋の建物が残っているだけで、あとは一面の原っぱ。
鉄道線路も草ぼうぼう。踏み切りは無くなっていた。
震災後1年半以上たっても、復興は何も手がつけられていないみたいに見える。
大きなスーパーの廃墟。
このスーパーの業務用エレベーターの中から、先週遺体が見つかったとのこと。
『何も、こんなすざましいところを通らなくてもいいじゃないか。』と、
思っていたら、そのスーパーの廃墟のすぐ隣が今夜のホテル。
ホテルには、復興工事の作業員らしい方ばかり泊まっている。
みんな頑張ってる。

翌日は昼前に野外のイベント会場で演奏。その後は大ホールで。
一生懸命の演奏。
皆さん、たくさんの拍手をくれた。
『やーやどー』の掛け声も、大きな声でかけてくれた。
でも、やはり何となく元気が。
そりゃあそうだ。
あんなすざましいめにあったのだから。

『私には何にも出来ない。私には何にも出来ない。』そういう声が耳元で聞こえる。
仕方がない。
『もうどうなってもいい!』
ただただ思いっきり、バチを三味線に叩きつけた。

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2012年10月19日 (金)

『三日と続かず。』

今、通芳と東北新幹線で福島に向かっている。
芸術音楽の秋。 ここのところ演奏が続いている。
おとといまで二日間帝国ホテルで演奏。
昨日は武蔵野公会堂。
明日からは大船渡市で演奏がある。

私が30才ぐらいの時、ある歌謡曲歌手のコンサートにゲスト出演した。
その時に、歌手の楽屋に訪れていた高名な占い師に言葉をかけられた。

「あなたの名前の運勢は、凶です。仕事も趣味も三日続かず、
同じことを続けられないという運勢です。」
たしか私の名前は、父親が命名画数の本を見ながら、
2週間考えに考えて付けた最強の名前のはずだ。
もしかして父親が、字の画数を数え間違えたのか?
たしかに私は学生の頃アルバイトをしても、三日まではとても調子がいい。
雇い主からもお客さまからも評判がいいし、自分も楽しい。
だが三日を過ぎると駄目だった。
同じことをすることがつまらなくなり気力が萎え、無理をして続けると高熱が出た。
私は三味線を弾いて、今年で44年めになる。
何故三味線は続けていけるのか?
演奏する会場や土地柄、お客さまやスタッフが、ほとんど毎日変わっていく
からなのだろうか。
若い時に芝居の仕事をした時があった。
毎日同じ会場に行き、同じ出演者の中で、同じきっかけで同じ曲を演奏した。
やはり三日を過ぎると、つらかった。

占い師は「あなたは細い針の穴を通すような、繊細で鋭い感性を持っています。」
とも言った。
私はきっとこれからも、毎日毎日違う土地を旅し、私の持つ感性を生かしながら
三味線を演奏していく。

これも父親がくれた、一つの運命なのだろうか。

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