『さすらいの街、邂逅。』
夜の闇の中、私は薄暗いアーケードの中で佇んでいる。
街の灯りが、夜霧にけむるように目にしみる。
やがて闇の中から、次男が近づいて来た。
次男は私の顔を見ると、無言で先に歩きはじめる。
大きな月も霞んでいる。
ここは大阪難波の雑踏の中。
次男は今月一ヶ月、大阪松竹座勘九郎さんの襲名披露に出演していた。
私もライブと講習会で、大阪に来ていたのだ。
「つるとんたん」に行った。すごい待ち時間。
次男の行きつけのお好み焼き屋はお休み。
難波の街は、たくさんの人ごみ。
その中を黙々と二人、入れる店をさがして歩く。
閉店間際だが、小さなお好み焼き屋を見つけた。
ウーロン茶で乾杯。
異郷の地で久し振りに見る次男の顔は、まるで別人のように大人びていた。
お好み焼きと明石焼きを、二人で食べる。
お好み焼きを焼いてくれたおばさんが、マヨネーズでお好み焼きに絵を書いてくれた。
次男のお好み焼きにはスヌーピー。
私には通天閣。
待ち合わせたアーケードの下で別れる。
次男は振り返らずに歩いて行く。
次男の姿はしだいに闇の中に溶け込み、やがて見えなくなった。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント