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2009年10月16日 (金)

『2009年8月26日 毎日新聞 関西版』

だいぶ前の記事ですが、とてもいいことを書いていただいたので、
よかったら読んでください。
8月に発売した私の初めてのライブレコーディングCDは、この会場で
昨年のライブをレコーディングしたものです。


101600


『音楽評

三つの顔 濃醇な音に魂

佐藤通弘 津軽三味線ライブ
(8・9日、滋賀県近江八幡市の酒游舘)
がらんとした元酒蔵に演奏者が現れ客席が黙る。
最初に聞こえてきたのは、セミの声だった。
セミが音頭を取ったという伝説の曲を弾きたくて、この時期に
ここに来たと佐藤通弘は話した。2日間で、彼の三つの顔を知った。

伝承者の顔。
最近では津軽三味線を大ホールで聴くこと多くなった。聴衆層の拡大は
喜ばしいことだが、バチが弦と皮を打つ衝撃音や、指が棹を滑る摩擦音を
聴き取るのに、電気装置はまだ未熟だ。滑らかな名人芸に流れがちな
最近のスタイルとは違い、重たくごつごつした音が、佐藤の持ち味だ。
酒でいうなら、淡麗でなく濃醇。眼前1メートルから音が耳にぶつかってくる力。
うん、と客の声がかかる。一音一魂とはこういう瞬間にこそふさわしい。

即興家の顔。
初日は即興パフォーマー浦辺雅祥との共演。佐藤が楽器を究めたのに対して、
彼は何一つ究めず、サックスもリコーダーも初めて持つかのように扱う。
息を思いきり吹き込む管以上ではないし、演奏という意識もないだろう。
体と道具(楽器)を使って、無造作に音を空間に放り出す。床に鉄パイプや鎖、
角材を転がすと、妙に物質感のある音が木の柱に反響する。
佐藤は弦をゆるめたり、バチで弦をこすりつけて反応する。彼は30年近く、
各国の即興演奏家と手を合わせてきた。どんな相手にも正対していく柔軟性を、
その夜はたしかめた。

教育者の顔。
2日目には高校1年生の弟子が登場した。緊張をほぐすように語りかけ、
入りやすいように合図を出し、技の見せ場を作るなど「教育的配慮」が行き届き、
良き師匠ぶりを見せてくれた。少年の習いたての音は初々しくすがすがしい。
磨いたばかりの酒米のようだ。今後の熟成が楽しみだ。破格の津軽三味線奏者の
心と技が、異端とならずに継承されていくのを聴いて、嬉しい気持ちがした。

(細川周平・国際日本文化研究センター、音楽評論家)』

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