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2009年8月 9日 (日)

『蝉しぐれ』

近江八幡 酒游舘での演奏です。
こちらでは毎年一回のペースで演奏を続けて来ました。

酒游舘は、江戸時代から続く老舗の造り酒屋、西勝酒造の
酒蔵をホールにした会場です。音響設備は一切使わずに、
三味線の激しい音はダイナミックでありながら響き過ぎず、
小さい音はあまく切なく、まことに自然な響きを持つ会場です。

例年は秋に演奏させていただいておりましたが、今年は
夏真っ盛りに参りました。それは昨年来た時に、夏になると
隣の欅の木にとまる蝉が、たいそうなくのだということを
うかがったからです。

私は『その蝉しぐれの中で三味線を弾いてみたい。』そう思ったのです。

開演は6時半。一部は約40分。蝉は日没までなきますから、
ちょうど一部の演奏は蝉との共演。

二部は私のソロ演奏ということになります。

蝉しぐれの中での演奏は、まさに無限にひろがるイメージの海でした。
洪水のような蝉しぐれの中で、目も開けられないほどまぶしい灼熱の
太陽にあぶられている私がいたり。山の端に入り込む真っ赤な夕陽に、
私の体まで染まってしまったり。
演奏の中で、様々なイメージがひろがっていきました。

その中で私は、人間の耳というものはなんて不思議なものなのだろうと
感じました。私の弾く三味線の音量と、蝉の音量とのバランスが、
聞こうとする自分の意思で自由自在に変化するのです。蝉しぐれの
洪水の中に身を置く時には、蝉の音量が最大になり三味線の音が沈む。
蝉の音を心証風景の一部にする時には、蝉の音がタンブーラのように
沈んだ低音になり三味線の音が浮き出てくる。まさに、人それぞれの
持つイメージ次第で、ボリュームのバランスを自由自在に変化できるのです。

蝉しぐれの中で、摩可不可思議な酒游舘での一夜が、過ぎていきました。

田名部 お島この
音頭 取るものは
大安寺 柳の 蝉の声
(田名部お島こ節より。)


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080900

昨年秋の酒游舘ライブの時にライブレコーディングしたCDが、8月8日に
酒游舘レーベルから発売になりました。今までのスタジオ録音とは違い、
テクニックのシャープさはありませんが、ライブ感溢れる構成になっております。
酒游舘の音の良さも感じていただけると思います。どうぞよろしくお願いいたします。


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