『一つ一つが、一度きりの演奏。』
今日は立川の高齢福祉施設でのコンサート。
この施設では月に一回、いろいろな音楽家を招いて
コンサートを開いているそうです。
お客様は施設の方以外にも、ご近所にお住まいの方々もいらっしゃいます。
会場に着くと舞台や音響のチェックをしてから、弟子の星野君と
施設の食堂のお昼をいただきました。
開演時間が近づき紋付き袴に着替えていると、
『もうお客様がいっぱいです。こんなにたくさんのお客様が入ったこと、
今までありませんでしたよ。』とのこと。
とても嬉しくて、なんか気分が上向いて来ました。
演奏中は演奏に集中出来て、あっという間にプログラムが
終わってしまいました。施設の方々もご近所の方々も、会場で
一つになり私の演奏もお話しも、食い入るように聞いてくださいました。
楽屋で着替えていますと、何人かのお客様が楽屋を訪ねてくださいました。
その中の一人の方が、昔のソロCD『ジョンカラ』を私に見せて、
「10年前に佐藤さんのコンサート行って、サインしてもらったCDです。」
「今日もサインしてもらえますか?。」と、おっしゃいました。
私がサインさせていただいている間にされた、その方のお話しが胸にしみました。
「10年前コンサートには妻と母親と三人で、一番前で見たんですよ。
でもその妻は三年前に亡くなりました。妻とはいつも『佐藤さんの三味線の演奏、
よかったね。』と、話していましたので、妻の葬式では佐藤さんのこのCDを流して
妻を送ったんです。昨年母親も亡くなり、今では一人暮らしです。」
「今日も一番前の席でコンサートを聞きました。10年前に三人で行った佐藤さんの
コンサートが、昨日のように思い出されて、涙が止まりませんでした。」
奥様とお母様と三人で来てくださった一度のコンサート。
この三人の方達にとって、たった一度きりのコンサートが生涯の思い出に
なったのです。とてもありがたいことだと思いました。
そしてまた、私にとっては年に何十回するコンサートでも、お客様にとっては
とても大切な一度きりのコンサートになるかもしれない。
『一つ一つの演奏が、お客様にとっても私にとっても、一生に一度しかない
大切な演奏なのだ。』と、思ったのです。

