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2008年5月12日 (月)

「久方ぶりの栃尾又温泉」

二年ぶりに栃尾又温泉を訪れました。

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(湯治場の趣栃尾又温泉旧館)

051202
(栃尾又温泉渓谷の浴舎)

私がこの温泉を初めて訪ねたのは、もう十数年前にもなります。
その年は、サクスホンの坂田明さんのミジンコ空挺楽団のメンバー
として、中国やモンゴルなどの国々を何ヵ月も演奏して回るはず
でした。
ところが一国めの中国北京公演の時に具合が悪くなり、私は
北京公演だけで帰国することになってしまいました。
その頃の私は体の調子が悪いことが多く、「ああ、今日は演奏が
出来た。でも明日は出来るのだろうか?」と、毎回毎回の演奏を
するのがやっとという状態でした。
この途中帰国という最悪の事態に、坂田さんや他のメンバーの
皆さんに対して申し訳ないという気持ちと、音楽家としてこんな体で
やっていけるのかと、体の具合もさることながら気持ちがとても
落ち込んでしまいました。

帰国してそのまま家で落ち込んでいるよりも、一人でどこかに行こうと
思いました。その時思い出したのがこの栃尾又温泉でした。
以前より、尺八奏者の木津竹嶺先生から栃尾又温泉の素晴らしさを
伺っておりました。
栃尾又温泉は日本でも有数のラジウム温泉です。ラジウムから出る
放射線は、体の細胞を刺激し活性化していきます。
だからお湯に入らなくても、この土地に来るだけでも体が良くなるんだと、
竹嶺先生がよくおっしゃっていました。

私は一人で一週間、この栃尾又温泉に滞在しました。
毎日毎日、午前、午後、夜と、温泉に浸かりました。湯温はほぼ体温と
同じ、お湯に浸かるとまるで母親の胎内にいるよう。
ひとりでに体が胎児のように丸くなり、心が落ち着いていくのがわかります。
他の湯治客も、お湯に入るとじっと無言で微動だにしません。ただただ
温泉に入って、ご飯を食べて寝ての繰り返し。お湯に浸かりながら青い空を
流れゆく雲、浴舎の対岸のブナの林、ふわりふわりと空を舞うように散る
落ち葉を、浴槽の大きな窓から眺めていました。

すると四日めくらいから、魂の奥底からむくむくと沸き上がるように
『三味線が弾きたい。』という気持ちが湧いて来ました。
『そうだ。体の具合がどうなっても、一回でも二回でも演奏が出来れば
それでいいじゃないか。私は演奏する為に生かされているんだから。』
そう思うことが出来るようになりました。
もう早く帰って三味線が弾きたくて仕方がありません。
栃尾又温泉に来た時は下を向いて歩いて来たのに、帰りは力が
みなぎっているようでした。

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(栃尾又温泉子持杉)

051204
(栃尾又温泉夫婦欅)

今も、キラキラと新緑にかがやくお湯に浸かりながら、あの頃のことを
思い出します。

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