「北帰行(その二)」
弘前駅に迎えに来た通芳と二人で、師匠山田千里のお墓参りに。
お墓に積もった雪はさほどではなく、手で雪を掃除しました。
お花を替えてお線香を焚いて、手を合わせます。
『先生。私が三味線を弾けるのも、私が三味線を弾いて幸せなのも、
すべて先生のおかげです。ありがとうございます。ありがとうござい
ます。』
まるでお経のようにぶつぶつと語りかけると、ひとりでに涙がこぼれて
きます。
胸が感謝の気持ちでいっぱいになりました。そして生前先生に会えた時に
いつも感じていた、あのつつまれるような安心感がありました。
翌朝、弘前駅まで通芳は見送りに来ました。
駅中のドトールで、二人無言でお茶を飲みます。さぁそろそろ改札口に
行こうという時、通芳がケーキが食べたいと言い出しました。
テイクアウトのケーキを買ってあげて改札口へ。
お互い「じゃあ。」「うん。」と、私は改札を通りました。
しばらく歩き階段を降りかけた所で改札口を振り返ると、通芳は
まだそこにいて、買ってあげた小さなケーキの箱を持ったままこちらを
見ています。
私が手を上げると、通芳も小さく手を上げました。
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