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2007年6月16日 (土)

「竹林寺。」

今日は牧野植物園での演奏会です。

豊かな緑に囲まれた高台にある植物園。

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建物は木材を多用し天井も高く、演奏にはとてもいい響きの
会場でした。今日の共演者は昨日に引き続きタブラの吉見さんと、
地元在住の語り部の兼松憲一さんです。

私と吉見さんとの演奏が一部と三部。間の二部は兼松さんの語りに
私達が参加します。
一部の演奏は、まず私のソロ演奏からです。私が出す三味線の響きが
会場の四方の壁から、あまく艶っぽく返ってきます。
その響きを聞きながら三味線を弾いていくと、だんだんその音の中に
自分の魂が入り込んでいくのがわかります。
目の前に現れた淡い光が次第に大きくなり、私の体もなく三味線もなく、
その光の中に包まれてゆく。そうなるともう、私の意思は要りません。
私の意思には関係なく、三味線がひとりでに音を作り出してゆきます。
私はただその淡い光の中に身を委ねているだけ。
至福の時です。『ああ、なんて私は幸せなんだろう。』と思ってしまいます。

二部の兼松さんの語りは「かぐや姫」。

そして三部は吉見さんと盛り上がりました。
三味線のおかげ、共演の吉見さんや兼松さんのおかげ、聞いて下さった
お客様のおかげ、演奏の機会を作って下さった主催の方々のおかげ、
いい響きを返してくれた会場のおかげ。皆さんのおかげで私は、元通りの
元気を取り戻すことが出来ました。本当に有難いことだと思いました。

終演後にすぐそばにある竹林寺に、吉見さんと一緒に連れていって
いただきました。

竹林寺は、有名なよさこい節の、『〓坊さん かんざし 買うを見たー よさこいよさこい〓 』という歌詞の中に出てくる、かんざしを買った坊さんがいたお寺だそうです。


山門から参道をたどって行くと、古い石段、苔が一面に広がるお庭、
神秘な色をたたえた本堂脇のお池。古く落ち着いた雰囲気の、風情ある
古刹でした。

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もうすでに日が傾きかけ、参拝する人もまばらな本堂で、ひとりお灯明を上げました。

遥か遠く、宗旨も違う土佐の竹林寺から、死に目に会えなかった父の冥福を祈りました。

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2007年6月15日 (金)

「40年ぶりの授業参観。」

今日は、「高知市文化プラザかるぽーと」の小ホールでのコンサート。
共演者はタブラ奏者、吉見征樹さんです。

飛行機で高知入りした吉見さんと二人、お昼過ぎから
ゆっくりサウンドチェック。
そして楽屋で開演時間を待ちます。

その時に吉見さんに、昨夜父が逝ったことを話しました。
吉見さんは私の父と面識がありました。二人でしみじみと、お互いの
父親の話しをしました。

私も芸人。
芸人は親の死に目にも会えないと前から覚悟はしていましたが、
昨夜はホテルに私一人。誰にも言えない心の苦しさ。さすがに眠れない
一夜を過ごしました。でも吉見さんと父の話しをしたことで、私の心は
だいぶ楽になりました。

さあそれでは仕度をしようと、何気なく客席を映すモニター画面を
見ますと。客席の最前列にポツンと一人だけ、年配の男性が座っています。
『こんな早い時間からもう来場して下さっているお客様が。』と思いました。
でも『あれ?まだ開場はしていないはず。へんだなぁ。』と思い、モニター
画面をもう一度見直すと、誰も客席には映っていませんでした。
『もしかしたらお父さんが?』そう思ったとたん、私の沈みきった気持ちが、
不思議にウキウキして来たのです。

『お父さんが見に来てくれた!』まるで小学校の授業参観にお父さんが
来てくれた時のように。
演奏前に、私の心は救われました。吉見さんと、そして私の父に。
演奏が始まり、最初にモニター画面に映っていた年配の男性が座っていた
席を、私は舞台からさがしていました。

最前列の他の席はみな埋まっているのに、その席だけは、コンサートが
終わるまで空席のままでした。

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2007年6月14日 (木)

「土佐へ」

今日は土佐の高知に行きます。
行路は、列車で東海道、備讃瀬戸大橋、そして讃岐から
祖谷挟をたどり土佐の高知に至ります。
岡山駅で新幹線を降り、高知行きの特急「南風」号に乗り換えます。
「なんぷう」号という、なんといい響きでしょう。

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「南国土佐に運んでくれる南の風」。

南風号は岡山駅を出発してしばらくすると、瀬戸大橋を渡ります。
私の乗った南の風は低空飛行する飛行機のように、瀬戸内海の
島々の上を飛んで行きます。
金比羅さんで有名な琴平駅を出ると、山間地帯へと進んで行きます。
やがて祖谷渓谷にさしかかり、南風号は祖谷挟を望む切り立った崖の
上を、渓谷に沿って右に左に走ります。
車窓から下を見ると深い渓谷、上を見ると高い山。
山々は渓谷に迫り、頂きははるかに高く、首が痛くなりそうです。

祖谷渓谷を過ぎると、列車はまるで細い山道をたどるように、
左右が草木の山林の間をゆっくりと登って行きます。
登りきったところで、古くて小さな煉瓦作りのトンネルに入りました。
すると、さぁーと草木が湿ったようなかおりの風が車内に吹き込んで
きました。車内が深い緑に染まったようでした。
真っ暗なトンネル中を、ごぉーという風の音をたてて突き進んで行きます。
それは長い長い時間でした。
車内の草木の湿ったかおりはますます強まり、まるでタイムトンネルに
入ってしまい、古い時代の昔の空気が入って来たような、そんな気が
しました。
御免(ごめん)という、変わった名前の駅を出ると、まもなく高知駅に
到着です。
明日からの演奏会を主催して下さるご夫婦が、高知駅までお迎えに
来て下さいました。

夜の食事を終えホテルの部屋に帰ると、「父死す。」との報が届きました。

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