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2007年3月11日 (日)

「不思議な朝の風景。」

昨夜遅くにチェックインした広島の空港ホテル。
朝、目を覚まし窓のカーテンを開けると、窓の外には思っても
みなかった風景がひろがっていました。
ホテルの前には、池あり林あり築山ありの英国式のような
広々とした庭園があったのでした。

通芳を電話で起こし、ロビー階のレストランへ。
庭園を眺められる大きな窓際の席で朝食。
窓の外には空の青と、それに映える庭園の明るい緑がいっぱいに
ひろがっていました。するとそこに突然、空から白い物がゆっくりと、
はらはらと音もなく降ってきました。
青空から白い雪が。この不思議な光景に、二人無言でみとれていました。
その間、音も時間も止まってしまったように感じました。

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「父の気持ち。」

お昼に広島空港を飛び立った飛行機は無事羽田空港に着き、
そのまま弘前に行く通芳を見送る為に東京駅に行きました。
東京駅地下街を、通芳の弁当を探して彷徨する。
通芳はなかなか買うものが決まらない。結局イタリアンレストランの
テイクアウトと、チャイニーズレストランの杏仁豆腐を買ってあげる。

通芳は小さい声で「ありがとう。」。

ホームに行くと、もうすでに通芳の乗る列車は入っていて、
そのまま乗り込む。通芳の席はC席、三列座席の通路側。
通芳はお弁当のイタリアン料理と杏仁豆腐を膝の上にのせている。
窓際のA席には若い男の人が座っている。
今日は満席のこの列車、通芳の隣のB席の乗客はどんな人が
来るのだろうか。通芳は列車がどのあたりに行ったら、イタリアン
料理と杏仁豆腐を食べるのだろうか。満席の狭い普通車の座席で、
この豪勢なデザート付きのお弁当は食べづらいんじゃないだろうか。
などと、私はいろんなことを考えていました。

発車まであと5分。

通芳は、私がホームにいることがわかっているのかいないのか、
私の方をちらっとも見ない。やがて発車時間。
発車ベルが鳴りドアが閉まり、列車は動きはじめました。
私の視界から通芳が消えてしまう直前、通芳はほんの少し私を見た。

『なーんだ。通芳は私がここにいたのを知っていたのか。』。

吸い込まれて行くように遠ざかる、列車の赤いテールランプ。
その時、すごい勢いで過去の情景が甦りました。
セピア色の上野駅のホーム。列車の窓の外に佇む父。
一人列車に乗っている小学校三年の私。私の初めての一人旅。
私の膝の上には、父の買ってくれたお弁当とみかん。
それを何か心配そうに見るている父。
私は、隣や前の席の人達に気恥ずかしくて、父の方を少しも見なかった。
列車が動き出した時に、私は父を見た。
その時の父の顔は、切ないような哀しいような、なんとも言えないような
顔をしていました。

私はその時、『なんでお父さんはそんな顔をするんだろうか。』と、思っていました。

40年経った今、その時の父の気持ちが初めてわかったような、気がしたのでした。

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