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2006年6月25日 (日)

「机上の写真」

私の机の上には、一枚の写真があります。
師匠と、師匠の奥さんと私、三人が写っています。

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この写真は師匠が亡くなる一ヶ月ほど前、私が師匠に最後に会った時に撮ったものです。この頃の師匠は薬の副作用のせいか、物忘れすることが多くなっていました。ある兄弟弟子が先生に「おはようございます。」と言っても、先生はきょとんとした顔で、返事もしてくれないこともあったようでした。その兄弟弟子は「先生は私のことも分からなくなっちゃったのかなぁ。」とショックを受けていたようでした。私はこの日、山唄(弘前の師匠のお店、津軽三味線ライブハウス。弘前駅前にあります。)に着くと、真っ先に師匠に挨拶に行きました。すると師匠は急に嬉しそうな顔をされて、「遠いところまでよく来たな。三味線弾け!」と、舞台に顔を向けたのでした。私は津軽小原節を弾かせていただきました。私が弾いている間、師匠は私を真剣な眼差しでじーとw)見つめて、身じろぎひとつしません。その師匠の視線を感じながら三味線を弾いていますと、師匠の目が、メガネごとだんだんだんだん大きくなってきて私に迫ってくるのです。そして目が開けていられないほど、金色にぴかぴか光ってきたのです。私はもう何がなんだかわけが分からなくなってきて、とにかく無我夢中で三味線を弾きました。この時が、私が生きている師匠の前で三味線を弾いた、最後になりました。「舞台で演奏するより、先生の前で演奏する方がよっぽど緊張します。」と、私のお弟子さんはよく私に言います。お弟子さんのその言葉を聞くたび、私はこの時のことを思いだします。

私は忘れることができません。
師匠のきびしくて暖かい、あの大きな大きな、私を見つめる目を。

津軽三味線LIVE HOUSE『山唄』
http://www001.upp.so-net.ne.jp/ryuken/yamauta.html

通弘

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